Universe for Surround
Yohichi Tsuchiya
Armeria Strings Quartet
Symphonic Suite for Surround Ensemble
作曲家 土屋 洋一のファーストアルバムとなる「Universe for Surround」が
ハイレゾ・サラウンドでe-onkyo より好評配信中。
録音は 深町純 ラスト・レコーディング「黎明」第20回、「The Art of Fugue BWV-1080」第22回、「Death and the Maiden」第23回、
「『Contigo en La Distancia』~遠く離れていても~」第24回、「Touch of Contra Bass」第25回、「ViVa The Four Seasons」第26回、
日本プロ音楽録音賞 最優秀賞受賞エンジニア Mick沢口氏。
Amazon.co.jp / iTunesより配信のものはこちら。
響きと対話する……それがサラウンドの醍醐味 長谷川教通
ブックレットより
このアルバムを、私は繰り返し聴いている。回を重ねるごとに弦楽四重奏によるサラウンドの響きが身体に深く染み込んでくる。サラウンドといっても、音が飛び交ったり激しく移動したり、そんな派手な演出とは無縁の世界。繊細で透けるような響きが空間に漂い、さまざまな表情で聴き手に語りかけてくる。土屋洋一さんの創り出す旋律はとても感受性が豊かで、それらを巧みに絡み合わせながら光と陰影を描き出していく。その様は、さながら映像のないドラマを音楽で展開しているかのようだ。
4本の楽器が互いに旋律という台詞を交わしながら、重なり合ってハーモニーという情景を描き出す。聴き手は、映像のないドラマに触発され、思い浮かんだ自分だけのシーンを心のスクリーンに投影していく。「雨女」「ほたる火」……そんな印象的なタイトルに感性を刺激され、次々とイメージがふくらんでいく。さらに弦楽四重奏より量感の増した弦楽合奏に管楽器が加わって、情景は多彩な変化を見せていく。96kHz/24ビット/5.0chで録音された音楽の表現力は、2chステレオの比ではない。弦楽器の響きが消え入る瞬間まで聴きとれる。そのゾクッとする感動は、ハイレゾ&サラウンドならではのもの。
土屋さんはサラウンドで録音され、聴かれることを前提にして曲を作っている。このような音楽作法はきわめて希だと言えるかもしれない。しかし、生の音楽はそもそもサラウンドなのだ。もうずいぶん前のことになるが、私が初めてプラハを訪れた折りに、プラハ城のスペイン・ホールで名ヴァイオリニスト、ヨセフ・スークが率いる室内楽団のコンサートを聴く機会があった。このホールの豪華さは有名だが、それ以上に響きの豊かさに感動させられた。スークがヴァイオリンを奏でると、その音色がホールの空間を心地よく響かせ、それが弾き手に戻っていく。スークはその響きを聴きながら次のフレーズを奏でていく。ああ、彼は響きと対話しながら弾いているんだ。
響きとの対話。それは音楽の根源的な要素だと思う。ヨーロッパのカテドラルでオルガンやコーラスを聴いたことがある人なら、その意味はすぐにも理解してもらえるだろう。たとえば音楽では楽譜の存在が欠かせないが、楽譜はあくまで2次元で表記された記号の集合体。少し論理が飛躍するが、2次元の楽譜には3次元で表現されるべき要素が組み込まれているはずなのだ。
そう考えるなら、音楽の録音や再生でサラウンドはもっと重視されていい。半世紀以上にわたってスタンダードとされてきた「モノラル~ステレオ」という既成概念に、私たちは慣れすぎてしまってはいないだろうか。楽器の配置やマイクロフォンの位置を周到にデザインしたサラウンドの表現力には計り知れないものがある。その領域に足を踏み入れ、未知の世界を探索する土屋洋一という若く鋭敏な才能にエールを贈りたい。
e-onkyo | Mick沢口氏が主宰するUNAMASレーベルの新作はサラウンド再生のために作られた弦楽四重奏
これまで、深町純『黎明』やEriko Shimizu & Strings4『Afterglow』など、サラウンドでこそ作り出せる立体的音場を生かした作品をリリースしてきたUNAMASレーベルより待望の新作が登場。
今作も、UNAMASレーベルならではの〈サラウンド再生〉でこそ真価を発揮する作品となっているが、今回は、より根本的な作曲の時点から〈サラウンドによる立体的音場〉を意識した作品であるという点で、これまでとは異なるアプローチの作品と言える。
若き作曲家、土屋洋一が〈サラウンド〉による立体的音場で再生されることを想定して書いた今作、まず驚かされるのは、サラウンドを駆使したコンポジションが「ここまで楽曲への印象を豊かにするのか」という事。左右にダイナミックに揺れ、突然背後に気配を移すと、自分のまわりを軽やかにはねて回る。録音後の編集ではなく、作曲の業でこの世界観を見事に描き出します。また注目すべきは、その音響効果のみならず、日本人の琴線に触れる、どこか郷愁を誘う名旋律の数々。一聴しただけでは到底若手の作家による作品とは思えないほど、落ち着きのある熟成された輝きを放ちます。
作曲家、土屋洋一の才能と、レコーディング・エンジニア、Mick沢口による緻密なサウンド・デザインが生み出した『Universe for Surround Yohichi Tsuchiya』。是非サラウンドで、この新たな音楽体験をしてみては。
e-onkyoで配信のものはこちら
Yohichi Tsuchiya Armeria Strings Quartet,
Symphonic Suite for Surround Ensemble
UNAMAS
2014/02/21
(P)2014 UNAMS J
土屋 洋一プロフィール
Composer,Musician
作曲家、音楽家
東京の渋谷区に生まれる。大学入学資格検定を合格後、20歳よりピアノをその後作曲を始める。2011年東京芸術大学作曲科を卒業。作曲を故 北村昭、近藤譲、山本裕之、照屋正樹、山本純ノ介、米倉香織 各氏に師事、サラウンドデザインをMick沢口、録音を亀川徹、DAWとエンジニアリングを江夏正晃に学ぶ。
作曲及び5.1chサラウンドミックスした楽曲で、世界的な団体であるAESが行う130th AES Convention LondonのStudent Recording Competitionに日本代表としてエントリー。131st AES Convention New Yorkにてイーグルス、エアロスミス、スティーリー・ダンなど多くの著名アーティストのミキシングや音楽プロデューサーとしても知られるElliot Scheinerにより称賛を受け、グラミー賞受賞アルバムや多くの同賞ノミネートアルバムを世に送り出している2LレーベルのMorten Lindbergに「聴いたことの無い音楽を聴いた」と評された(2011年)。
ファーストアルバム「Universe for Surround」(2014年)をリリース。UNAMASクラシックシリーズのアレンジを継続的に担当し。アレンジ、録音編集、スコア・パート譜制作等を行った J.S.BACH 「The ART of FUGUE BWV-1080」(2015年)、Franz Schubert 「Death and the Maiden」(2016年)が日本プロ音楽録音賞優秀賞を受賞。「Touch of Contra Bass」、「ViVa The Four Seasons」が同賞の最優秀賞を受賞(2018,2019年)などをはじめ現在多岐に渡る作編曲活動に加え立体音場(イマーシブサウンド、サラウンド、マルチチャンネル、多群アンサンブル、バイノーラル)による音楽制作や後進の指導を行っている。
その他のトラックのご試聴はこちらから。e-onkyo / Amazon.co.jp / iTunes
「Universe for Surround」
□曲目
[1] E
[2] Expectation ~期待~
[3] Five
[4] Ame Onna ~雨女~
[5] Hotarubi ~ほたる火~
[6] Last Song
[7] Slow Hug
[8] Sonata
[9] Path in Winter ~冬の小道~
[10] Symphonic Suite for Surround Sound : 1. Prelude
[11] Symphonic Suite for Surround Sound : 2. Cori Spezzati Nova
[12] Symphonic Suite for Surround Sound : 3. Path in Winter
□演奏者
アルメリア弦楽四重奏団
前原千里(ヴァイオリン)
竹田詩織(ヴァイオリン)
多井千洋(ヴィオラ)
越川和音(チェロ)
M10 Prelude 演奏メンバー
上田章代(フルート)
佐藤恵梨奈(ヴァイオリン)
竹田詩織(ヴァイオリン)
濱野詩帆(オーボエ)
原 陽子(クラリネット)
廣幡敦子(ファゴット)
三村総撤(ホルン)
□録音
M-01~09
2012 10-14 音響ハウス第一スタジオ、東京
M-10
2009 8-17,18,31 TYA A-st
M-11/12
Studio-T/marimo RECORDS
スペシャルブックレットより
UNIVERSE FOR SURROUND スペシャルブックレット
Universe for Surround
Yohichi Tsuchiya
Armeria Strings Quartet
Symphonic Suite for Surround Ensemble
e-onkyo / Amazon.co.jp / iTunes より好評配信中。
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